高市早苗新首相、外交・安全保障で正念場

日本初の女性首相が直面する複雑な国際情勢

2025年10月21日、高市早苗氏が日本の第104代内閣総理大臣に指名され、日本憲政史上初の女性首相が誕生した。しかし、その門出は華やかなものではなく、政権発足直後からトランプ米大統領の来日や物価高対策など山積する課題に直面している。

高市新政権の外交・安全保障政策の特徴

基本方針:保守強硬路線

高市氏は積極財政と伝統的な国家観を重視する姿勢で知られ、「鉄の女」と呼ばれたサッチャー元英首相を敬愛している。その外交政策は以下の特徴を持つ:

政策分野具体的な方針
日米同盟「日米同盟をさらなる高みに引き上げる」と強調し、基軸として重視
多国間協力日米韓、日米豪、日米フィリピンなど多国間協力機制を深化
防衛力強化安保関連3文書を前倒しで改定する方針
インド太平洋同志国やグローバルサウス(新興・途上国)との協力拡大を推進

中国との関係:強硬姿勢と現実主義の間

高市氏の対中政策は複雑な二面性を持つ。選挙期間中、高市氏は「台湾有事就是日本有事」(台湾有事は日本有事)を公言し、対華強硬姿勢を前面に打ち出した。

しかし、日本学者は、日本が経済的に大きく中国に依存しており、中国との関係を悪化させれば日本経済は持続不可能になると指摘している。

対中政策のジレンマ:

強硬姿勢現実的制約
防衛予算をGDP2%以上に引き上げ、技術輸出管理を強化中日双方年間貿易額が3000億ドルを超える経済的相互依存
靖国神社参拝など歴史問題での保守的立場党内温和派や経済界からの慎重論
「中国威胁論」の宣伝選挙後、「中国は重要な隣国であり、良好な関係を維持したい」と態度を軟化

トランプ大統領来日:最初の外交試練

タイトなスケジュール

高市新首相の外交日程は極めて密集している:

日程イベント
10月24日所信表明演説
10月26日~ASEAN関連首脳会議出席のためマレーシア訪問(首相就任後初の海外訪問)
10月27-29日トランプ米大統領来日、28日に日米首脳会談
月末韓国でのAPEC首脳会議

トランプ政権からの要求

同盟国との負担共有を求めるトランプ氏は日本にも防衛支出拡大を迫るとみられる。具体的には:

予想される米国の要求:

  1. 総額5500億ドル(約80兆円)の対米投資の具体化
  2. 防衛費をGDP2%から3.5%程度まで拡大
  3. 米国製武器の大量購入

高市首相は「防衛力を充実させていく話をしたい」と語り、安保関連3文書を前倒しで改定する方針を説明する考えを示している。

政権運営の課題:脆弱な基盤

自維連立の不安定性

高市政権は日本維新の会との連立を組むが、維新は「閣外協力」の形態をとり、閣僚を送り込まない。これは:

  • 利点: 公明党離脱後も一定の政権基盤を確保
  • 弱点: 閣外協力のため結束が弱く、政策実行力に疑問

高市氏は初閣議で「決断と前進の内閣」と表明し、経済対策の策定を指示したが、自民党は国会参衆両院で過半数に達しておらず、執政基盤が脆弱である。

新人内閣のリスク

高市内閣の人事配置も注目される:

ポスト人選特徴
外務大臣茂木敏充元幹事長(再登板)経験豊富
官房長官木原稔前防衛相高市氏の信頼が厚い
防衛大臣小泉進次郎総裁選で対決した相手
財務大臣片山さつき元地方創生担当相女性登用の目玉

しかし、全体として新人が多く、「慣らし運転内閣」との評価もある。

国際社会の反応

中国の警戒

中国外交部は「日方が中日四個政治文件の各項原則と共識を遵守し、歴史・台湾などの重大問題における政治承諾を信守し、積極理性的な対華政策を実行することを希望する」と表明した。

米国の期待

トランプ大統領は高市氏の当選に温かい祝辞を送り、高市氏は「日米同盟をさらに強固で繁栄したものにするため協力したい」と応答した。

国内の懸念

石破茂前首相は高市氏の当選後、「日本を歧途に導かないことを希望する」と述べ、「必要なのは分裂と対立ではなく、協力と寛容だ」と警告した。

展望:正念場を迎える高市外交

高市新首相が直面する外交・安全保障上の課題は多岐にわたる:

短期的課題(2025年内)

  • トランプ政権の防衛費要求への対応
  • ASEAN・APEC での外交デビュー
  • 中国との関係管理

中長期的課題

  • 国防予算GDP2%以上への引き上げと財源確保
  • 対華強硬路線と経済的現実主義のバランス
  • 国会での少数与党による政策実行の困難

専門家は、高市氏の実際の対華政策は選挙期間よりも実務的になる可能性が高く、さもなければ執政基盤不安定のリスクに直面すると指摘している。

日本初の女性首相として歴史に名を刻んだ高市早苗氏。その政権が安定し、日本の国益を守りながら地域の平和と繁栄に貢献できるかどうか、今後数ヶ月の外交手腕が試金石となる。


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