
2025年最新データで見る日本のEV市場の現状と課題
日本の電気自動車(EV)市場は、2022年の「EV元年」以降、普及が停滞している状況が続いています。2025年9月時点での最新データによると、EV・PHEVの新車販売比率は2.81%となっており、世界平均と比較して大きく遅れをとっています。
本記事では、最新の販売データをもとに、日本国内のEV販売シェアの推移、メーカー別動向、世界との比較、そして今後の展望について詳しく解説します。
日本のEV販売シェア推移(2020年〜2025年)
年次推移の概要
| 年 | EV+PHEV販売台数 | 新車販売シェア | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 2020年 | 約2.9万台 | 約0.9% | – |
| 2021年 | 約5.0万台 | 約1.3% | +72% |
| 2022年 | 約9.2万台 | 約2.4% | +84% |
| 2023年 | 約14.1万台 | 約3.5% | +53% |
| 2024年 | 約10.3万台 | 約2.8% | -27% |
| 2025年(1-9月) | 約6.3万台 | 約2.6% | +5%(Q3) |
2024年のEV販売台数は102,868台となり、2021年から3年間続いた増加傾向から一転、前年の140,678台と比較して26.9%の減少となりました。
2025年の月次トレンド
| 月 | 販売台数 | シェア | 前年同月比 | 特記事項 |
|---|---|---|---|---|
| 1月 | 8,736台 | 2.7% | +8.3% | 14か月ぶりの増加 |
| 2月 | 7,379台 | 2.1% | -27.0% | 34か月ぶりの低水準 |
| 3月 | 11,007台 | 2.6% | -14.1% | 輸入車が過去最多 |
| 4月 | 6,260台 | 2.2% | +6.0% | BEV販売が18か月ぶり増加 |
| 5月 | 6,928台 | 2.6% | +10.0% | 輸入車シェア44.7%で最高 |
| 6月 | – | 2.9% | – | 輸入車が過去最多 |
| 7月 | – | 2.4% | – | 22年以降最低水準 |
| 8月 | 6,407台 | 2.6% | -9.4% | 輸入車が6か月連続最多 |
| 9月 | 12,547台 | 3.5% | +32.7% | ホンダN-ONE e:発売効果 |
2025年9月のEVシェアは3.51%で、前年同月の2.62%からは大幅に増加しており、新型車投入による回復の兆しが見えています。
メーカー別EV販売シェアの動向
2025年9月のメーカー別ランキング
2025年Q3のEV販売台数は26,690台で、前年の25,422台と比較すると4.99%の増加となりました。
| 順位 | メーカー | 主力車種 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 1位 | ホンダ | N-ONE e:、Honda e | 9月に新型軽EV投入で急浮上 |
| 2位 | 輸入車合計 | テスラ、BYD、Hyundai | 継続的に高シェア維持 |
| 3位 | 日産 | サクラ、リーフ、アリア | 従来トップだが新型投入前で減少 |
| 4位 | トヨタ | bZ4X、bZ3 | PHEV含めて堅実に販売 |
| 5位 | 三菱 | ekクロスEV、アウトランダーPHEV | 軽EVとPHEVで展開 |
輸入車の躍進が顕著
輸入車の合計が2,890台と7か月連続で最多となり、登録車のBEVに限定すると88.94%を占め、6か月連続で80%を上回ったという状況です。
主要輸入EVメーカーの動向
| メーカー | 2025年9月販売台数 | 前年比 | 主力車種 |
|---|---|---|---|
| テスラ | 約1,470台 | +178% | Model 3、Model Y |
| BYD | 799台 | +211% | ATTO 3、DOLPHIN、SEAL |
| Hyundai | 106台 | +83% | IONIQ 5、INSTER |
テスラは前年の528台から過去最多の1,470台に増加し、BYDは前年の257台から過去最多の799台に増加しています。
BEVとPHEVの比較分析
パワートレイン別シェアの内訳
| 種別 | 2024年平均 | 2025年1-9月平均 | 傾向 |
|---|---|---|---|
| BEV(純粋EV) | 1.8% | 1.4% | やや減少 |
| PHEV | 1.0% | 1.2% | 微増 |
| 合計 | 2.8% | 2.6% | ほぼ横ばい |
2025年1〜4月のPHEVも含めたEV+PHEVの総合計数は約3万3000台(販売シェア2.40%)となっています。
軽EVの状況
日産サクラと三菱ekクロスEVの2車種が市場をけん引してきましたが、2022年の発売から3年が経過し、販売が減少傾向にあります。
| 車種 | 2022年販売 | 2024年販売 | 2025年予測 | 変化 |
|---|---|---|---|---|
| 日産サクラ | 約3.3万台 | 約1.2万台 | 約0.9万台 | 大幅減 |
| 三菱ekクロスEV | 約0.6万台 | 約0.4万台 | 約0.3万台 | 減少 |
世界と比較した日本のEV普及率
主要国のEV販売シェア比較(2024年)
| 国・地域 | EV+PHEV販売シェア | BEVのみ | 特徴 |
|---|---|---|---|
| ノルウェー | 88.9% | 79.3% | 世界最高水準 |
| 中国 | 約48% | 約35% | 販売台数世界一 |
| ドイツ | 約18% | 約13% | 欧州最大市場 |
| 米国 | 約9% | 約7% | テスラが牽引 |
| 日本 | 2.8% | 1.8% | 主要国で最低水準 |
日本の普及率は2.8%と、世界的にみるとまだ低い状況です。世界各国でBEVシェア率が想定以上に上昇している一方で、日本市場は2.16%と、世界平均の19%と比較しても低迷しています。
世界のEV販売動向
2024年の世界の電気自動車の販売台数は1700万台を超え、このうち64%が中国、18%がヨーロッパ、8%がアメリカで販売されました。
| 年 | 世界EV販売台数 | 世界シェア | 日本シェア | 乖離 |
|---|---|---|---|---|
| 2020年 | 約300万台 | 約4% | 約0.9% | -3.1pt |
| 2022年 | 約1,000万台 | 約13% | 約2.4% | -10.6pt |
| 2024年 | 約1,750万台 | 約22% | 約2.8% | -19.2pt |
日本でEV普及が遅れる主な理由
1. 充電インフラの不足
日本政府は2030年までに充電インフラの数を30万口まで伸ばし、ガソリン車並みの利便性実現を目指すとしていますが、現状はまだ不十分です。
| 指標 | 現状(2024年末) | 2030年目標 | 達成率 |
|---|---|---|---|
| 充電器総数 | 約3.5万口 | 30万口 | 約12% |
| 急速充電器 | 約8,000口 | 3万口 | 約27% |
2. 車両価格の高さ
| 車種カテゴリー | ガソリン車平均 | EV平均 | 価格差 |
|---|---|---|---|
| 軽自動車 | 約150万円 | 約250万円 | +100万円 |
| コンパクトカー | 約200万円 | 約400万円 | +200万円 |
| SUV | 約300万円 | 約500万円 | +200万円 |
3. 新車種投入の遅れ
国内メーカーは直近で新型車種を投入できていない。ただ、25年後半から26年にかけて日産やスズキ、トヨタ自動車などが国内で新型EVの販売を計画しています。
4. ハイブリッド車の高い人気
日本市場では、燃料別シェアでは引き続きHVが最多の52.3%で、HVを含む電動車全体のシェアは54.9%となっており、ハイブリッド車が主流となっています。
政府のEV普及施策と目標
国の基本方針
日本政府は、2035年までに新車販売をすべて電動車(EV、PHEV、HEV、FCV)にする目標を掲げ、2030年時点ではEV・PHV:20~30%、FCV:~3%、HEV:30~40%を目指すとしています。
2025年度の補助金予算
2025年度には、EV購入に利用できる「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」に1,100億円、また充電インフラ整備には460億円の予算が割り当てられています。
| 項目 | 2024年度予算 | 2025年度予算 | 増減 |
|---|---|---|---|
| CEV補助金 | 950億円 | 1,100億円 | +16% |
| 充電インフラ補助金 | 205億円 | 460億円 | +124% |
| 合計 | 1,155億円 | 1,560億円 | +35% |
補助金額の目安(2025年度)
| 車種タイプ | 補助金上限額 | 主な対象車種 |
|---|---|---|
| 軽EV | 最大55万円 | サクラ、ekクロスEV |
| 小型EV | 最大65万円 | リーフ、bZ4X |
| 普通EV | 最大85万円 | アリア、Model 3 |
| PHEV | 最大55万円 | アウトランダーPHEV |
都道府県別EV普及状況
人口1万人あたりEV普及台数ランキング(2023年度)
岐阜県は2015年から9年連続で首位を維持しており、2023年には人口1万人あたり67.3台に達しています。
| 順位 | 都道府県 | 人口1万人あたり普及台数 | 総普及台数 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 岐阜県 | 67.3台 | 約13,600台 |
| 2位 | 福井県 | 61.8台 | 約4,800台 |
| 3位 | 山梨県 | 59.2台 | 約4,800台 |
| 4位 | 岡山県 | 56.4台 | 約10,700台 |
| 5位 | 富山県 | 54.1台 | 約5,700台 |
PHEV普及率の地域差
PHEVの普及状況は、愛知県が最も普及していると分かりました。続いて岡山県、福井県、山梨県、岐阜県という結果となっています。
| 順位 | 都道府県 | 特徴 |
|---|---|---|
| 1位 | 愛知県 | トヨタの地元、PHEV選択肢豊富 |
| 2位 | 岡山県 | 長距離移動ニーズ |
| 3位 | 福井県 | 充電インフラと走行距離のバランス |
2025年〜2026年の新型EV発売予定
国内メーカーの新車投入計画
2025年以降は多くの自動車メーカーから新型EVが発売される予定です。
| メーカー | 車種 | 発売時期 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| スズキ | e VITARA | 2025年春〜 | スズキ初のEV、コンパクトSUV |
| ホンダ | N-VAN e: | 2024年10月 | 商用軽EV |
| ホンダ | N-ONE e: | 2025年9月 | 軽乗用EV、即完売の人気 |
| 日産 | 新型リーフ | 2025年後半 | フルモデルチェンジ |
| トヨタ・スズキ・ダイハツ | 軽商用EV | 2025年度中 | 3社共同開発 |
| ソニー・ホンダ | AFEELA 1 | 2026年 | プレミアムセダン |
輸入EVの新規参入・拡充
| メーカー | 計画 | 特徴 |
|---|---|---|
| BYD | 新型モデル追加投入 | 低価格帯で攻勢 |
| Hyundai | INSTER等小型EV拡充 | コンパクトEV市場に注力 |
| Zeekr | 日本市場参入検討 | 中国プレミアムEV |
2030年に向けたEV市場予測
シナリオ別の市場展望
| シナリオ | 2030年EV販売シェア | 条件 |
|---|---|---|
| 楽観シナリオ | 20〜25% | 充電インフラ大幅拡充、新車種多数投入 |
| 基本シナリオ | 12〜18% | 政府目標達成、段階的な普及 |
| 悲観シナリオ | 8〜12% | 充電インフラ不足、価格競争力不足 |
市場拡大の鍵となる要素
プラス要因:
- 充電インフラの急速な整備(30万口目標)
- バッテリー価格の低下(2030年に50%削減予測)
- 新型車種の大量投入(2025〜2026年)
- 補助金の継続・拡充
- 企業の脱炭素化ニーズ
マイナス要因:
- ハイブリッド車の継続的な高人気
- 中古車市場でのEV価格下落懸念
- 充電時間の長さ
- 集合住宅での充電環境整備の遅れ
まとめ:日本のEV市場の課題と展望
現状の総括
2025年Q3のEV販売台数は26,690台で、前年の25,422台と比較すると4.99%の増加となり、2四半期連続の増加と、回復の兆しが見え始めています。
今後の展望
短期(2025〜2026年):
- 新型車投入により販売台数は回復傾向
- 輸入車のシェアが引き続き高水準
- シェアは3〜4%台で推移
中期(2027〜2030年):
- 充電インフラの本格整備が進展
- 国内メーカーのEVラインナップ拡充
- シェアは10〜15%へ上昇
長期(2030年以降):
- 政府目標(EV+PHEV 20〜30%)達成に向けた取り組み加速
- バッテリー技術の革新により価格競争力向上
- 中古EV市場の成熟
消費者へのアドバイス
- 2025〜2026年は新車種ラッシュ: 購入検討には絶好のタイミング
- 補助金の活用: 国・自治体の補助金で実質100万円以上の割引も
- 充電環境の確認: 自宅充電可能かが最重要ポイント
- 用途に応じた選択: 日常使いならEV、長距離も多いならPHEVも選択肢
日本のEV市場は、世界と比較すると遅れていますが、2025年後半から2026年にかけての新車投入により、本格的な普及期を迎える可能性があります。充電インフラの整備と車両価格の低下が今後の鍵となるでしょう。

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