富士山が今シーズン初の冠雪 — 通常より21日遅れ

2025年10月23日、富士山に待望の初冠雪

2025年10月23日、甲府地方気象台は富士山の初冠雪を観測しました。平年より21日遅く、昨年より15日早い観測となり、10月23日の観測は1961年、1969年、2017年と並んで過去4番目に遅い記録です。

日本の象徴である富士山の初冠雪は、毎年秋の風物詩として多くの人々に親しまれています。2025年は、前年の記録的な遅れから一転して、比較的早い初冠雪となりましたが、それでも平年と比較すると3週間近く遅い観測となりました。

富士山初冠雪の基本知識

初冠雪とは何か

初冠雪とは、8月1日から翌年の7月31日までに山麓の気象官署から見て、山頂付近が初めて積雪などで白く見えることを指します。

よく混同される「初雪」とは異なり、初冠雪は以下の厳格な条件を満たす必要があります。

初冠雪の観測条件:

  • 麓の気象台から山頂付近が白く見えること
  • 実際に山頂で雪が降っても、麓から確認できなければ初冠雪とは認められない
  • 雲に遮られて見えない場合も初冠雪にはならない
  • 富士山の場合、「一日の平均気温が、その年の最も高い日」の後に、山頂付近が雪などによって白く見える様子が、麓の甲府地方気象台から見えたことが条件

平年値と観測方法

富士山の初冠雪の平年日は10月2日で、これは1991年から2020年の間の初冠雪を観測した日から算出されています。観測は1894年から山梨県の甲府地方気象台が担当しており、130年以上の歴史を持ちます。

2025年の初冠雪の詳細

気象条件と観測の経緯

10月22日、関東甲信地方は本州の南岸に停滞する前線の影響で広い範囲で降水があり、前線の北側の冷たい空気に包まれて季節外れの寒さとなりました。富士山山頂では一日を通して気温が0℃未満の「真冬日」となったため、雨ではなく雪が降ったとみられます。

翌23日、天候が回復して甲府地方気象台から山頂の雪化粧が確認できたため、正式に初冠雪が発表されました。

富士山初冠雪の歴史的データ

過去の初冠雪記録(遅い順)

順位観測日平年との差
1位11月7日2024年+36日
2位10月26日2016年、1955年+24日
3位10月23日2025年、2017年、1969年、1961年+21日
平年10月2日

2024年の11月7日は、1894年の統計開始以来、最も遅い初冠雪となり、それまでの記録(1955年と2016年の10月26日)を大きく更新しました。

近年の初冠雪記録(2020年代)

初冠雪日平年との差特徴
2025年10月23日+21日遅れ過去4番目に遅い記録
2024年11月7日+36日遅れ観測史上最も遅い記録
2023年10月5日+3日遅れほぼ平年並み
2022年9月30日-2日早い平年より早い観測
2021年9月26日-6日早い「幻の初冠雪」から見直し
2020年9月28日-4日早い平年より早い観測

最も早い初冠雪の記録

これまでの最も早い記録は2008年の8月9日で、8月に初冠雪が確認されたのは1914年、1935年、1994年、2008年の4回です。

2024年の記録的な遅れとその原因

130年ぶりの異例事態

2024年は富士山の初冠雪が11月まで持ち越される初めての事態となりました。10月最終日になっても初冠雪の便りが届かず、1894年の統計開始以来、過去130年間で最も遅い記録を更新しました。

異常な高温が原因

富士山頂の10月平均気温は平年がマイナス2℃なのに対し、2024年は1.6℃と、90年以上の観測の歴史の中で最も温かい10月となりました。

2024年の日本の夏の平均気温は、統計開始以来、2023年と並んで過去最高を記録し、9月、10月も異例の暑さが長引いたため、富士山でも雨の降る条件はあっても山頂で雪にならない状態が続きました。

気温上昇の影響

10月平均気温初冠雪日備考
2024年+1.6℃11月7日観測史上最も温かい10月
2016年高温10月26日暖冬の年
平年-2.0℃10月2日基準値

2位、3位の気温の高い年も富士山初冠雪は平年の10月2日と比べて非常に遅くなっており、山頂気温と初冠雪の時期には明確な相関関係があることがわかります。

初冠雪が遅れる理由

1. 気温の高さによる雪の定着の遅れ

気温が高ければ雪が溶けやすく、地表に留まりにくくなります。近年の地球温暖化の影響により、山岳地帯でも雪の定着が難しくなっていると指摘されています。

2. 視界不良による観測の遅れ

実際には雪が積もっていても、甲府地方気象台から富士山頂が雲や霧に隠れて見えなければ「初冠雪」として記録されません。2016年は統計上10月26日が初冠雪とされていますが、実際には9月25日の朝に静岡県側や山梨県の富士吉田などからは雪化粧をした富士山が見られていました。

3. 太平洋高気圧の勢力

例年10月は秋の移動性高気圧に覆われて涼しくなりますが、2024年の10月は夏の太平洋高気圧の勢力がまだまだ強い日が多くなっていました。

富士山初雪化粧宣言との違い

富士山には、初冠雪とは別に「富士山初雪化粧宣言」という独自の観測があります。

初雪化粧宣言とは

山梨県富士吉田市の富士山課が独自に確認しているもので、2006年から発表しています。気象台の厳格な観測条件とは異なり、より柔軟な基準で富士山の雪化粧を認定しています。

近年の初雪化粧宣言

初雪化粧宣言日気象台の初冠雪日
2025年10月23日10月23日同日
2024年11月6日11月7日1日差
2023年10月5日10月5日同日
2021年9月7日9月26日19日差

最も早く発表された初雪化粧宣言は2021年の9月7日、反対に最も遅かった年は2024年の11月6日です。

気候変動との関連性

温暖化の影響

近年、初冠雪の遅れが目立つようになってきました。地球温暖化の影響で秋の気温が高止まりし、降雪や積雪のタイミングが後ろ倒しになっている可能性が指摘されています。

今後の展望

今後、暑い秋が当たり前となると、富士山初冠雪が遅いのも当たり前になってしまうかもしれません。富士山の雪化粧は、単なる季節の風物詩ではなく、気候変動を示す重要な指標としても注目されています。

観光・産業への影響

スキー場への影響

2024年10月25日にオープンしたスノーパークイエティのスキー場では、ゲレンデに雪がほとんどなく臨時休業が続きました。初冠雪の遅れは、観光業にも直接的な影響を与えています。

観光シーズンへの影響

富士山の雪化粧は観光資源としても重要であり、初冠雪の遅れは写真撮影や観光客の訪問タイミングにも影響を及ぼします。特に紅葉と雪化粧のコントラストを楽しむ時期が短くなる傾向にあります。

まとめ:変わりゆく富士山の四季

2025年の富士山初冠雪は10月23日と、平年より21日遅い観測となりました。前年の記録的な遅れ(11月7日)と比較すると早い観測でしたが、それでも過去4番目に遅い記録です。

富士山の初冠雪は、日本人にとって季節の節目を感じさせる重要な出来事であり、単なる自然現象の記録を超えた文化的意義を持っています。しかし、近年の気候変動により、その時期は確実に変化しつつあります。

温暖化の影響で初冠雪の時期が遅れる傾向は今後も続く可能性があり、富士山の雪化粧はますます貴重なものとなっていくかもしれません。この変化は、私たちに気候変動の現実を身近に感じさせる重要なメッセージとなっています。


富士山初冠雪の観測データ(最近25年間)

初冠雪日平年との差特記事項
2025年10月23日+21日過去4番目に遅い
2024年11月7日+36日観測史上最も遅い
2023年10月5日+3日
2022年9月30日-2日
2021年9月26日-6日見直し後の記録
2020年9月28日-4日
2019年10月22日+20日
2018年9月26日-6日
2017年10月23日+21日過去4番目に遅い
2016年10月26日+24日2024年以前の最遅記録

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