ニデックの不正会計疑惑:何が起きているのか
はじめに
日本のモーター大手、ニデック株式会社は、2025年9月初旬、「不適切な会計処理」の疑いが複数見つかったことを公表しました。これを受けて、株価は急落し、国内外でガバナンス(企業統治)の在り方が問われています。
疑惑の概要と発端
- 発端となった子会社の報告
- 2025年7月22日、子会社「ニデックテクノモータ」から、親会社の監査等委員会に報告がありました。 東洋経済オンライン+1
- 内容は、中国子会社「ニデックテクノモータ(浙江)」で、2024年9月下旬に「サプライヤーからの値引きに相当する購買一時金(約2億円)」について、不適切な会計処理が行われた疑いがある、というものです。 東洋経済オンライン+1
- 調査の拡大
- 最初はこの事案(テクノ社の中国子会社)が中心でしたが、デジタルフォレンジック(メール、PC操作記録などの電子証拠の解析)を含めた内部調査を進めるなかで、他のグループ会社にも不適切な会計処理の疑いが及ぶ資料が複数発見されていることが明らかになりました。 東洋経済オンライン+1
- 具体的には、「資産性にリスクのある資産」の評価減の時期を恣意的に検討していた可能性が指摘されています。つまり、資産の減損処理をいつ行うかを操作することにより、業績への影響を調整しようとした可能性がある、ということです。 東洋経済オンライン+1
- 関税未払い等の別問題
- イタリア子会社 “NIDEC FIR INTERNATIONAL S.R.L.” に関して、製造品の原産国表記(中国製品をイタリア製とするなど)の誤りが指摘され、本来支払うべき関税が未払いとなっていた可能性がある貿易・関税上の問題も浮上しています。こちらは、決算報告書の提出遅延の原因の一つともなっています。 東洋経済オンライン+1
経営陣およびガバナンスの関与
- ニデックは「経営陣の関与または認識の下で」疑いがある処理が行われた可能性があるとしています。つまり、トップ層が知らなかったというだけでは済まない可能性があります。 ツギノジダイ+1
- 経営陣の責任やその後の対応が注目されており、第三者委員会の設置が決定されました。 ツギノジダイ+1
市場・財務への影響
- 株価の急落
- 公表後、株価は前日比で約22%前後の下落を記録し、1日での下げ幅としては過去最大級となりました。 東洋経済オンライン+2Reuters+2
- 決算報告書の遅延
- 2025年3月期の有価証券報告書や、2026年3月期第1四半期の決算短信の発表が遅れており、その理由にこの会計・関税問題が含まれています。 東洋経済オンライン+1
- 過去の修正・訂正
- 以前にも、売上計上の過大・連結調整の誤りなど、決算修正を行った例があります。たとえば2023年および2024年決算で営業利益を約67百万ドル減額(=日本円で数十億円規模)する修正がされました。 Reuters
第三者委員会の設置と調査内容
- 設置日:2025年9月3日、取締役会で決定。 ツギノジダイ+1
- 目的・委嘱事項:次のような点を調査対象としています。 ツギノジダイ
- テクノ事案を含む、不適切な会計処理疑義についての事実関係。
- もし不適切処理があった場合、過去の決算に与えた財務的影響額の算定。
- 原因の究明と再発防止策の提言。
- その他、委員会が必要と認める事項。
- 委員会の構成:外部の弁護士・公認会計士などを含む体制。たとえば委員長に法律事務所の弁護士、また複数の専門家を含めて客観性を確保する方向。 ツギノジダイ
何が明らかになっていないか・今後の焦点
- 疑惑の範囲:テクノ社の中国子会社だけでなく、他のグループ会社や経営陣全体の認識・関与がどこまで及ぶか。
- 金額規模:発見されている購買一時金の疑惑の額は約2億円相当ですが、過去決算修正分なども含めて、影響がどこまで拡大するかが未定です。
- 法的責任・社内制裁:不適切処理が確認された場合、関係者の処分、役員責任などどこまで問われるか。
- 信頼回復策:ガバナンス体制の強化、監査・内部統制の見直し、透明性向上のための具体的な施策がどのようになるか。
結論
ニデックの不正会計疑惑は、単なる一部子会社の不祥事にとどまらず、経営陣の関与やグループ全体のガバナンス体制に対する重大な疑念を呼び起こすものです。投資家・株主・取引先からの信頼を再構築するためには、第三者委員会による徹底調査と、再発防止策の実効性が問われます。決算報告の遅れや市場での評価下落もあり、今後の動きが注目されます。

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